『ここを覗いてくれると信じて、諸星君に残しておく場所です。諸星君が【課題】をクリアしてここにいる事を前提で僕は話します。諸星君ならきっと見ているよね....』
「課題........?.......っ!?」
ずきりと、軋んだような痛みを感じた頭部。
額に手を当てた瞬間、記憶が流れ込んでくる!
「さあ、ゲームを始めよう」
そう言って笑うのは、紛れもなくオレ【諸星秀樹】自身。
オレ自身はどこにいるのかさえわからないのにな、話す【オレ】をどこからかオレは見つめている。
「キミのデータをボクは借りなければいけない。けれど、そうするとキミはこのゲームに参加した意味がない」
多分オレはそいつを睨み付けたと思うぜ。
そいつはあっさり流しやがったけど。
「ボクが望むのは君たちの成長。......そして世界の成長....」
だから.....
「オレとゲーム、しようぜ?」
オレの口調、姿そのままの。だけどなんて言えばいい?
----泣きそうな顔があった。
***
オレの姿になったヤツはコクーンのゲームに参加する。
誰もオレじゃないって気付かねぇし、ゲームはおかしな事になってるし。
冷めた目で見てる表のオレと、心のどこかで無性に悔しがってるオレに気付いた。
『なんでオレはあそこにいねぇんだよ!』
『かえってよかったじゃん』
本当に最後はそいつがオレの分身に思えた。
オレがなりたくてもなれないものと決め付けていた何か。
忘れていた何か。考えようとしなかった何か。
何か大切なもの。
コクーンのゲーム終了後、コナンと別れてからそいつは.....【Noah's Ark】は呟いた。
「諸星君。キミとのゲームはこれから.....」
「思い出したぜ全部」
ゲームの課題はたった一つ。
【コクーンでの記憶を思い出す事】
報酬もなんにも出ない、自分勝手なゲーム。
オレが思い出すか。思い出さないか。
周りの成長に気がつけば思い出すかも知れない。思い出さないかもしれない。
全く気が付かないで今までのオレのままかもしれない。
そんな一方的なゲームだった。
画面の【Noah's Ark】が話し出す。
『ボクがキミのデータを借りてしまったら、キミが他の子供達と同じく経験出来ないと思ったんだ。だから考えた。それに.....これは自分勝手な意見だけど.....ボクを思い出してくれる友達が欲しかったんだ.....』
画面の中の【Noah's Ark】が【ヒロキ】が小さく小さく呟く。
『ボクの夢だった。友達と約束したりゲームしたり、普通に遊ぶ事が.....変だよね』
『ごめんね! 今のは忘れていいから!』
ぶんぶん手を振って慌てて弁解する。こいつホントに画像かよ。
「バカじゃねぇの。忘れるわけねぇだろ」
ぼそっと呟くヒトコト。
「ありがとう!!」
オレの声に反応したみたいにヤツは笑った。
「!!!?」
で。ふっと消えた。
ディスプレイには、
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Thank you. Best friend!
Up to the day which meets again.
HIROKI
Noah's Ark S.......
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そんだけ。
でも伝わったからな。
オレは目を向ける。
それは自分自身の心に。
オレは一歩を踏み出す。
何かがすぐに変わるワケなんかねぇのは分かってるけど。
けどな。
【あいつら】がのんびり停泊出来て。
んでまどろめる位にはオレがいい場所確保しとけるように。
将来有望になってやる。
ま、オレだから当然?
......お前らは次産まれるまで、いい夢見て眠ってろよ。
じゃな。
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