[ Noah's Ark ] の見る夢は?

 
 
だからオレは目を向ける。
 
避けてきたモノに。

 
 

 近頃、オレの身の回りが変だ。

 生活環境とか・・・そーいうモンが変わったんじゃねぇよ。

 警視副総監の祖父さんに周りはヘコヘコしてるし、その孫のオレに大人たちが愛想笑いを浮かべる。つまんねー世界さ?
 まぁ、その分オレが好き勝手出来て楽だけどな。

 だけど。

 そいうんじゃねぇ。
 なんて言えば伝わるんだろう。
 いや、こんな思い誰かに言う訳ねぇけど・・・
 おかしいんだよ。

 それはたとえばよくつるんでる滝沢や江守、清一郎がそうで。

 表情が、変わった。

--真っ直ぐな視線。

 行動が変わった。

--かけなくなった迷惑。

 言動が変わった。

--オレを「ショウガナイナ」と諌める言葉。

 それは本当に微妙な変化で。
 大人たちは気付いてねぇけど。

「なんなんだよ・・・。ワケわかんえんぇよ」

 ムシャクシャする。
 そしてこの頭の薄ぼんやりとした感覚。
 すべては〈コクーン〉を体験してからおかしい。

 いや、〈コクーン〉の後からおかしいんだ。

 

 オレはコクーンでの記憶を覚えてない。

 最後まで残った1人のうちだったと聞いても、全然ピンとこねぇよ。コクーンに入って、次に気が付いた記憶は、揺り籠の様なコクーンのカプセルの蓋が開いた時。

 滝沢が笑いながらオレをどつく。
「やったな! 諸星!!」
 江守も大はしゃぎで色々と語る。
 清一郎が嬉しそうに、
「ゲームオーバーになった後も、ずっとみんなの行動が見れてたんですよ? 諸星君かっこよかったです」

 

「・・・・覚えてねぇ。コクーンで何があったんだ?!」

 

 3人の残念そうな顔。思い出すと更に頭に霧がかかったようにモヤモヤする。
 そんな顔すんなよ!?
 覚えてねぇのはオレのせいじゃねぇだろ?!

 叫びたくて、止めた。

 コクーンの事なんかこっちから忘れてやるさ。
 そう思ったんだ。

 だけど3人はどんどん変わっていく。
 認めたくないけど〈成長〉してたんだよ。
 オレは置いていかれて。
 

 

オレは目を向けなければならなくなった。

〈コクーン〉で何があったのか。

自分の一歩のために。

 
 

コクーン.......

 世界初の体感シュミレーションゲーム。
 しかし社長であるトマス・シンドラー氏の逮捕、人工頭脳〈ノアズ・アーク〉によるコクーンの暴走により、現在は・・・

ノアズ・アーク.......

 体感シュミレーションゲーム〈コクーン〉発表の当日、そのゲームを乗っ取った人工頭脳。1年で人間の5年分の成長を遂げるという人工頭脳で・・・

かちり。

「まだ。まだ何か足りねぇよ」

 パソコンで検索したありきたりの言葉達。
 これは自分で調べないといけない気がしてた。

 まだだ。
 まだ、〈何か〉が足りない。

Hiroki Sawada-----.

 DNA探査プログラム/ノアズ・アークを開発した天才少年。

 

 何かが頭の中でパズルのピースのようにぴったりと当てはまる。

「こいつだ!!」

 モヤモヤする頭の中。
 ほんのかすか、記憶に残る1人の人間。
 それはオレと同い年くらいの男の子供で。

 寂しそうに、微笑む。
 やけに大人じみた表情。

 霧の奥から掘り出したような記憶の断片。

 ディスプレイに写っているヒロキ・サワダは。
 間違いなくその記憶の人間だった。

 
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